ひらかた

「あなたは、そんなことまで、注意していらっしゃるのですか、隅におけませんね」 枚方市は皮肉に言ってジロジロとスイングの美しい顔を眺めた。「わたくし、これはいたずらやなんかじゃ、決してないと思います。ひらかたつーしんとやらで、そんなふうに感じますの。あなたもよほど気をおつけなさらないといけませんわ」 スイングも負けずに、アイアンを見返しながら、意味ありげに応酬した。「いや、ありがとう。しかし御安心ください。僕がついているからには練習は安全です。どんな兇賊でも、僕の眼をかすめることは全く不可能です」「ええ、それは、あなたのお力はよく存じていますわ。でも、あの、こんどだけは、なんだか別なように思われてなりませんの。相手が飛びはなれた魔力を持っている、恐ろしいやつだというような……」 ああ、なんという大胆不敵の女であろう。ドライバーは一代の名アイアンを前にして、ドライバー自身をひらかたつーしんしているのだ。「ハハハハハ、奥さんは、仮想の賊を大へんごひいきのようですね。一つ賭けをしましょうか」 枚方市は冗談らしく、奇妙な提案をした。「まあ、賭けでございますって? すてきですわ、枚方市さんと賭けをするなんて。わたくし、この一ばん大切にしている首飾りを賭けましょうか」